クリエーティブビジネスに携わる方々へ
私がながらくお世話になった美容業界は、ヘアーアーティスト、メイクアップアーティストなどのクリエイティブな人達が集まっている業界です。そこでは、豊かな感性を持った魅力的な人たちとお会いしました。ビューティーサロンは、他のクリエーティブな業界、例えば出版社、デザインスタジオ、演劇、エンターテイメント、ファッションビジネスなどと同様に、顧客に支えられることによる利益を必要とします。そして、必ずしも一流のクリエーターがビジネスとして自分の店や会社を成功させることができるわけではありません。ファッションにおいても、過去に主任デザイナーとしてトムフォードを選んだグッチ、ミラノの小さなブティックで始まったアルマーニなど、彼らには、優秀なマネージャーがいたのです。とくに2000年代では、クリエーティブなビジネスにおいても、競争に勝るマネージメント能力が要求されるようになってきました。私は、そんな現実を見てクリエーターがビジネス社会で活動しようとするとき、必ず必要となる、総合的なビジネスの解説ができないものかと考えました。
クリエーターであるあなたに
クリエーターを志す人間の思考も少しづつ変化をはじめてます。現在、ものづくりの中枢にいるクリエーターは、子供の頃、山や海という自然環境の中で遊び、アクティブな生活を送っていた人が多く、自己表現も比較的ストレートなところがあります。
しかし、これからのクリエーターは、子供の頃から自然と関わる機会に恵まれない都会育ちが多い上に、並行してITリテラシーが飛躍的に成長したことも相まって、自分だけの世界を持ち、言葉以外の能力やメディアを使って短絡的に自己実現を図ろうとする傾向があります。また、自分だけの世界を持っているだけに、その世界を肯定してくれる情緒とか、感動とか、精神的なものに興味を持ち、行動に対する目的意識の希薄な人も少なくないのではないでしょうか?
例えば、東京に非常に有名なSHIMAという美容室があります。美容学校を卒業した学生は、SHIMAへの就職を希望します。その数は毎年1000人を超えるほどです。もちろん全員がそこで働くことはできません。他のサロンを探さなければいけないわけです。
ところが、面接に来る多くの学生が、「SHIMAで働けなかったら美容業界をやめます」と言うのです。彼らが本当にそのつもりなら、SHIMAというところでしか幸せな未来が開けないと考える学生が多数いるということです。
これは、彼ら自身ににとっても、業界、あるいは社会全体にとっても、大きな問題であると思います。豊かな感性と能力をもった学生が、そのキャリアのスタートラインで自ら道をあきらめてしまうという現実は、残念です。
新しい感動を求めるこれからの社会と、その中で生き残る企業には、今後ますます、クリエーターが必要となるのです。
これから提案する組織の中で活躍するFrame of Mined (思考の枠組み)
が理解できれば、今、あなたがおかれている組織をはじめ、どのような環境に身をおいたとしても、貴重な人材となる、世界を動かす原動力になれるはずです。
クリエーターとは
下記のリストは、ビジネスの中で、クリエーターが強みを活かすため、私があった芸術家、クリエーターの特性をメモしたものです。あなたにあてはまるものがありますか?
弱みに関しても、脅威に際して、それをカバーする考え方の枠組みを身につけてもらえればと思います。
クリエーターに限らず、持続力がない、苦しいことに耐えられないといった弱みは、もし自身のこととして考えつくなら自分のノートにメモしていきましょう。
「強み」
・自分を中心に、環境をホリスティックに観察することができる
・集中し、焦点をしぼって考えることができる
・創造力
・想像力に長けている
・本質を見抜く力がある
・美しさを求める
・美の基準を変えようとする力がある
・新しいものやコトに敏感
・新しいものやコトを発信する力がある
・自由を求める気持ちがある
・柔軟に対応できる
・自分を伝えたい、わかってもらいたいという欲求が強い
・チャレンジャーである(自分が生きているという証を残したい)
「弱み」
・矛盾点や調和しないものをすぐに修正したがる(不調和という環境に弱い)
・好き嫌いが激しい
・チームワークが長続きしない
・自分の既成概念でものをみやすい
・自己管理や社会的付き合いに疎い
・お金に無頓着
・責任感がない
・社会の規制反発したがる
・論理的にに考えられない(データ、数値に弱い)
・現実を理解しにくい
・わがまま
・価値を安易に判断しやすい
・楽しくなければやりたくない
「クリエーターに対する好機」
・産業界においてデザインの時代を迎えている
・ブランディング、トータルイメージを創造する
・善を求める
・オリジナリティの追求をする
・細部へのこだわりが必要とされる
・他者に貢献できる立場で行動する
・長期プランニングの中で行動する
「クリエーターに対する脅威」
・社会が多様化、個性化するにつれ、消費者の一人一人がアーティスティックな自己表現を求めだす。
・競争の激化
・自分が作りたいものだけをつくって貢献について考えられない。
・自己中心主義
・快楽主義
ビジネス概論
図は、クリエーターも身につけておく必要があると考えるビジネスの基本構造です。
私が考えるビジネスの基本要素(ビジネスエッセンシャルズ)を表しています。
この図は、家の形をしていますが、企業活動をわかりやすい形にしたものです。
とくに大切なものは土台の部分です。土台がしっかりしていないと、短期間で家は壊れてしまします。その土台になるのは、みなさんクリエーターが持っている、本物、良いもの、美しいものを求める価値観とそれを生み出す能力です。
家の大黒柱は、マーケティング。そして、まわりの6つの柱は、マネージメントにかかわる6つの要素を現わした柱で、O:企業の目的 S:3つの経営戦略 G:目標 M:モニターシステムという屋根を支える形になっています。